看護学?リハビリテーション学研究

看護学?リハビリテーション学研究からのアプローチ

当事者やその家族が抱えるスティグマ、社会的態度について

矢萩 未来 助教
リハビリテーション学科 作業療法学専攻
矢萩 未来 助教

研究の概要

皆さんは、「精神障害者が自分の家の隣に引っ越ししてきたら」、「 家族が障害のある当事者と結婚すると言ったら」どう思いますか?先行研究では、精神障害者に対するスティグマ(否定的に捉え、不当な扱いを受けること)や否定的な社会的態度(他者に対する一般的な傾向、他者に示す態度)は、精神障害者の地域生活において阻害因子になることが報告されています。また、発達障害の子を持つ保護者もスティグマを抱えており、保護者の精神的健康や子供の地域社会への参加に悪影響を及ぼすことが報告されています。

私がこれまで取り組んできたことは、「作業療法を目指す学生の精神障害者に対する社会的態度の形成要因」に関する研究です。精神障害者に対して否定的に捉えている学生でも,将来、作業療法士として 精神障害者の支援に関わります。 精神障害者に対する否定的な社会的態度の形成要因を明らかにすること、更に肯定的?好意的な社会的態度への構築に向けた具体的な教育方法について考えてきました。最近は、発達障害や発達障害が疑われる子をもつ保護者のスティグマについて興味を持ち、研究の幅を拡げようと奮闘中です。

なぜこの研究を始めたのですか?

私は作業療法士として精神障害者のリハビリテーションの仕事をしてきました。 私が新人の時は、数年~何十年と長く入院する方がいました。 現在は、精神症状がある程度落ち着けば退院し、「病気の症状と付き合いながら住み慣れた地域で生活する」ことになります。 患者様ご自身もそう願う方が沢山いらっしゃいます。 しかし、ご家族や周囲の受け入れが難しい現状にも直面しました。 精神障害者に対する差別や偏見は、当事者が地域で生活するための大きな壁になっていることを感じ、この研究に興味を持ちました。

社会の中でどんな応用の可能性がありますか?

精神障害者に対して否定的に捉えている学生でも,将来は精神障害者の支援に関わります。精神障害者に対するスティグマや否定的な社会的態度がリハビリテーション実施の阻害因子になる可能性も否めません。 精神障害者に対する否定的な社会的態度の形成要因を明らかにすること、そして、肯定的?好意的な社会的態度への構築に向けた具体的な教育方法が確立されれば、一般の方にも提供でき、微力ながらこのような取り組みが、いつか精神障害者への地域生活支援、作業療法の質の向上に繋がればと思います。

作業療法士は、体の動きだけでなく、一人ひとり異なる特性、価値観、生活スタイル、環境などに目を向け、障害当事者やその家族が自分らしい生活を送れるよう支援するスペシャリストです。発達障害の分野でもスティグマは、子供の社会参加や保護者の精神面の不調に関連しています。保護者の抱えるスティグマを明らかにし、支援内容を検討することも生活を支援する作業療法士の役割だと考えます。

これから学ぼうとする人たちに向けて、研究領域の魅力 を伝えるメッセージをお願いします。

作業療法士は精神障害や発達障害領域での活躍が期待され、大人だけでなく子供の精神障害に関する関わりも増えてきています。 障害の有無に関わらず、誰もが住み慣れた地域で自分らしい生活に繋がるよう一緒に学んでいきましょう。