看護学?リハビリテーション学研究

看護学?リハビリテーション学研究からのアプローチ

日本語話者児童における日本語の読み書き習得を基盤とした 英語の読み書き習得について

澁谷 文恵 助教
リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
澁谷 文恵 助教

一斉授業で認知能力の発達段階に配慮した文字学習を実践すると、潜在的な読み書き困難リスク児童の文字習得の遅れや、負担の軽減につながるかどうか明らかにすることを目的とした研究です。小学5、6年生時点の英語読み書き習得度について、読み書きに関わる認知能力や日本語の読み書き習得度、認知能力に基づく練習を開始した学年(低?中?高学年)を中心にけんとうして、その練習効果について検証します。日本語?英語ともに、読み書き困難児童の早期発見だけでなく、介入研究によって将来的な学習不振の予防的効果についての知見も得ることができる研究です。

なぜこの研究を始めたのですか?

もともと急性期の脳神経外科病院で働いていたのですが、大学院進学を期に「学習障害」を学ぶ機会があり、そのニーズの高さに驚いたことが一番です。ニーズはあるのですが、専門的な見地から分析したり、根拠を持って練習方法を提供できる場所があまりにも少ない事にも驚きました。専門家を増やすことも大切だと思い、養成校の教員を目指しましたが、専門家が育つまでの間はどうすればいいのかと、もどかしい気持ちになりました。また、児童生徒さんたちに個別検査を実施して、丁寧に困難さの分析をすることも非常に大事で、必要なことなのですが、有症率が8%前後にもなる障害ですので、時間も人手も足りません。また、障害を特定してから練習を開始するのですが、特性に合わせて差異はあるものの、そこにはある程度共通する学習方法があります。そして個別指導に使っている検査や指導方法は集団にも応用できる部分があります。結局はある程度同じような練習をするのであれば、障害の有無にかかわらず、最初から全員にその練習方法を実施することで読み書き困難について予防的に介入することになるのではないか、と考えました。そのために、その方法が本当に一斉授業で功を奏するか、根拠を求めるために研究をすることにしました。

社会との関わりは??

読み書きに困難さを抱える児童生徒、学生の皆さんに、負担の少ない学習方法を提案することができると思います。

社会の中でどんな応用の可能性がありますか?

学習困難(特に文字習得)を抱える児童生徒さんがいる小中学校での、根拠に基づいた(確実性の高い)文字習得方法として、一斉授業や個別学習場面での利用が可能になるといいなと思います。

これから学ぼうとする人たちに向けて、研究領域の魅力 を伝えるメッセージをお願いします。

勉強するほどに、当たり前や普通だと思っていたことが当たり前や普通ではなかったことに気が付くことが結構あります。何かを学ぶときも、みんなと同じ方法でなくともよいのだと、それがまったくおかしなことではないことにも気が付きます。自分が自分であること、他人が他人であること、共通もしているけれど確かに違う存在でもあることに魅力を感じるようになります。特に小児分野の言語聴覚障害領域にいると、今日できなかったことが明日できるようになっていく成長の喜びを日々感じることができます。その人にあった成長の方法、学びの方法をサポートしたり提案したりすることもでき、できなかったことができるようになった時の、お子さんたちのきらきらとした表情を見るときの幸福感は格別です。誰かのために必死に考えて調べ、働いた結果、自分も幸せになるという素敵な研究領域です。